「ビオガーデン」という概念
これまで庭園とは、観賞用の動植物を芸術的に配し、それにより生じる人工的な様式美を追求するというものが一般に認識されてきました。
しかし昨今問題となっている自然環境の減少により、新たに本来の生態系を取り戻そうという考え方が出てきました。
自然との共生を題目にした庭園は、その目的によって大きく二つに分類されます。
そのひとつは純粋に自然生態系の場をめざす「ビオトープ」、もう一つはビオトープ的庭園としての「ビオガーデン」です。
ビオトープは、完全にその土地に生息していた動植物を呼び戻し、ほぼ閉鎖した食物連鎖を完成させる作業で、
これこそが純粋に自然を追求した姿と言えるでしょうが、あまりマニアックに本来の自然環境を求めすぎると、
ともすれば単なる荒れた沼地となってしまうことが往々にしてあります。
そこで完全なる自然の再現ではなく「自然の要素を取り入れた」庭園として、ビオガーデンという考え方が誕生しました。
生物工学を連想されることを嫌ってあえてドイツ語と英語の折衷としたこの庭園は、町中の小公園や歩道の花壇、一般家庭の庭など、
既にコンクリートで 固められ、改良された園芸品種が植わっているような場所に手を加え(エコアップ)、人の手によって管理し、
人の手によって野生の生き物を呼び繁殖させるという作業は、生態系の維持と鑑賞という一見両立しがたい要素をバランス良く配分しています。
おそらくこれからの庭園はこういったものが主流になると考えられます。
教務支庁では、上記のビオガーデンのもつ自然との共生、鑑賞に耐えうる美観といった特長に、
さらに親神様の御守護への感謝という概念を加えた庭園をめざしています。
親神様の体の一部である地面に、人により作られ、人が利用するための既存の庭園をもとにしながらも、
できるだけ野生生物にとって好ましい要素を含ませて、ビオ(バイオ)≒微生物をも含めた、より健全な生態系の成立をめざすこと、
そして豊かな緑に触れて楽しみ、水のせせらぎを聞いて安らぎ、跳ね踊る魚に驚き、
訪れる野鳥を見て感動する場所を、出来るだけ多くの人に提供すること。
これこそが神様と人間との共同作業であり、神人和楽の陽気世界の具現化であると考えられてます。
植物については従来の栽培種・園芸種ばかりでなくその地域に在来する草木を選び、
今まで雑草といわれて排除されてきたものも、野草として多少は受け入れていくことになります。
また人の利用を前提としているので、その状態を維持するために草刈りや剪定などの作業も定期的にしていきます。
また池においてはマツモなど水中葉の水草を多用しつつ、さらにガマや葦による水質浄化も図ることにしています。
池は大きく上流域、中流域、下流域、河口域に分け、それぞれカマツカ、ワタカ、ウグイ、メダカ、フナ、タナゴ、
モロコ、ヨシノボリ、ドジョウなど日本固有種のみを配し、加えてイシ貝など貝類も入れて魚類繁殖の一助としています。
また人工的にホタルの繁殖も視野に入れております。
観賞用の池や水槽などに代表される閉鎖水系においては、生物、特に魚類は放置していれば自ら排泄するアンモニアによって死んでしまいます。
そこでそれら有害物質を取り除く作業が必要になってきます。 水の浄化には、「吸着濾過」と「生物濾過」の二種類があります。
「吸着濾過」は活性炭や中空糸膜フィルター等によって毒素を取り除く方法で、
一時的・短期的には非常に有効であり即効性もありますが、定期的な濾材の交換などが必要なため、長期の運用には 向いておりません。
「生物濾過」は毒素を自然界に存在する微生物によって分解させる方法で、砂浜や干潟などがこれにあたります。
具体的にはアンモニアを好気性のニトロバクターというバクテリアによって亜硝酸にし、さらにニトロゾモナスがそれを
硝酸塩に変換し、最後は嫌気性の還元バクテリアの手で炭酸ガスと窒素に分解され、それを水草が肥料として吸収するという構図になります。
教務支庁の池は完成して間もないこともあり、未だ良質のバクテリアは住み着いておりません。
従って半年ほどは上記吸着濾過を併行して運用し、水の交換も定期的に行うことになりますが、
微生物が完全に活動してからは生物濾過のみとし、 蒸発による水位下降分は雨水を補充する予定です。
具体的には、ポンプによって下流から吸い上げられた水は、ドライ濾過槽を通過して大きなゴミを取り除かれ
(ここでも多少生物濾過します)最上流から流されます。上流には多孔質の黒雲母石英である麦飯石(中国より輸入)を敷き詰め、
これにより汚染物質の吸着と微生物による浄化、さらには各種ミネラルの補給を効果的に行います。
また下流部の砂には珪砂を混ぜ、嫌気性還元バクテリアの繁殖とPH調整を自然に行えるようにします。
さらに最下流では水上葉の水草による植物濾過も行われます。
出水口
中央の岩の間から水が補給されます。
中流域
中流域は少し緩い流れになっています。
雨水の利用はビオガーデンの趣旨に合致しているものですが、本館の屋根は銅葺きのため金属イオンの問題が出てきます。
銅イオンは生物にとって有害であり、特にバクテリアは銅イオンの溶け込んだ水では生存出来ません。従ってこれを除去する
必要がありますが、東京教務支庁は逆浸透膜濾過装置(R/O浄化システム)を導入することでこの問題を解決しました。
この装置を通して無害化された雨水を一日200リットル程度池に加え、蒸発による水位低下対策としています。
以上庭園のビオガーデン化によって、これまで自然が少なくなった街で生活し、人工的な公園や芸術的な庭ばかりに接してきた人達、特に子供達にとっては、
野生の生物に触れ、四季のにぎわいを感じることができるなど、親神様の御守護を直接味わう機会に恵まれ、情操面、信仰面の向上に寄与できるものと確信しております。
(文責 若狭一廣)